☆262文字の真理の道

 

坐禅と般若心経の集いの法話より vol.1

さて『摩訶般若波羅蜜多心経』は多くの訳があるなか、もっともよく用いられているのは、唐の玄奘三蔵法師(602~664)の訳であります。
玄奘三蔵は後世に孫悟空が活躍する小説、『西遊記』の三藏法師のモデルとしてよく知られるところですが、それは玄奘三藏が著した旅行記『大唐西域記』が元となっています。 苦難の旅を続ける小説同様、玄奘三藏は17年の長きにわたってインドで仏教を学び、帰国後、多くの経典の訳経に努めた偉大な賢聖でありました。

 
『摩訶般若波羅蜜多心経』は、本文262文字と最も短い経典に大乗仏教の心髄、〈空〉の真理が説かれているといわれます。「色即是空、空即是色」のフレーズは皆様も何度も耳にされたことでしょう。
では『般若心経』とか『心経』と親しまれる、この経に説かれる〈空〉とは、また「色即是空、空即是色」と説示される真理は、如何なる内容を語り掛けているのでしょう。

 
以前に私は少ない部数ですが『般若心経』のタイトルを「小冊子」にして、皆さんにお配りしたことがあります。
このとき副題を〈苦しみを生きる〉としました。
〈苦〉なくしては宗教も仏教も成り立ちません。〈苦〉を認識するところから始まり、〈苦〉を肯定して生きる。生ききること、これが、即今に、生きて在る全てです。

 
〈苦しみを生きる〉とは〈幸せに生きる〉と同義ですが、幸せに拘って、苦しんで生きる…ことではありません。
『摩訶般若波羅蜜多心経』には、そのための分析と実践的方法論が説かれています。大観的には仏教のそのカリキュラムを学び取ることが出来るでしょう。

自分の足でしっかりと立つ! ことは大事です。人生に、生きる場に、立ち上がれない宗教は宗教とはいえない。このように考えるのは私だけではないと思っています。
坐禅も立ち上がるために坐るのですから……。

次回へ続く (以後『摩訶般若波羅蜜多心経』『般若心経』『心経』は同じ経典です)

by 「般若心経」のおはなし  2012/7/4(水)23:15 ブログ掲載